8月24日(土)〜9月4日(水)、12:00〜18:00、木金休廊
<ステイトメント> 2年前、「多重人格」をテーマに制作を行っていた際、鏡に分身が映り込むような合わせ鏡の視覚効果を再現するために、三面鏡の模型を制作し、覗き込むようにして見える光景を描いていました。それ以来、鏡で作った空間や物、それらの見え方や映り込み方に魅了され、現在も制作を続けています。
原始の時代は水面に自分の姿を映し、現代はスマートフォンで自分の姿を映し、人は様々なものに自分の姿を映します。合わせ鏡に映った自分の分身が、異なる意思を持つかのように想像してしまったり、鏡は外面を映すだけでなく、そこに内面を映しこみ、探してしまうような感覚を引き起こします。
スマートフォンは現代に欠かせない「魔法の鏡」となりました。自分を映し、行ったことのない世界を映し、画面を隔ててここではない場所とつながることも、思うままに自由自在となっています。しかし、この魔法の鏡には、「見えているだけで実在しないもの」も多く映し出され、それが本物であるかのように見えることもあります。
鏡をのぞき込んだ時、自分と「映り込む自分」と、「そこにある鏡」があるように、 実在と、見えているものと、物質との区別を、私たちは自然とできているつもりでいます。 華やかで、キラキラして、グロテスクな見せかけの世界がこれだけあるのに。
今回の制作では、クレーンゲームの景品やテーマパークのおもちゃなどを合わせ鏡の内側に配置し、描きました。アクリルやプラスチックなどの透明な物質の間を透過する光が、鏡の間で反射し続け、その反射は永遠に色を決定しません。
見えることの不思議さ、見えているものの不確実さを楽しみながら、「幻影」と「実在」を探索することを目指して描いています。 (百合野美沙子)
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